2017-01-01から1年間の記事一覧

幸田真音「天佑なり」を読むⅢ-31~40

幸田真音「天佑なり」を読むⅢ-31 8月17日からは、支店の検査に取りかかりました。米国では州によって銀行法が異なり、ニューヨークでは支店の設置ができぬので、長崎個人が正金の代理店(Agency)として営業している形になっています。しかるに桑港で…

幸田真音「天佑なり」を読むⅢ-21~30

幸田真音「天佑なり」を読むⅢ-21 1897(明治29)年正金銀行の顧客である一仏国商人が倒産しました。正金銀行はこの商人から生糸の輸入為替を買い取っていましたので、この人の破産で僅少ながら数万円の損失を受けることとなりました。ところがこの…

幸田真音「天佑なり」を読むⅢ-11~20

幸田真音「天佑なり」を読むⅢ-11 高橋が行くと総裁は床の上に坐って、大本営で天皇に拝謁を賜ったことを感激に満ちた言葉で話し、かつ伊藤総理から日本政府は今回朝鮮の内政を改革し、独立を扶助するの費用として、同国政府に対し、300万円を用立てる…

幸田真音「天佑なり」を読むⅢ-1~10

幸田真音「天佑なり」を読むⅢ- 1 ペルーに失敗し、福島の農場、天沼の鉱山等四方の計画ことごとく成らず一敗地に塗(まみ)れた高橋を、事情を知っていた西郷従道、品川弥二郎、松方正義らの諸先輩並びに友人前田正名らは誠に気の毒であるとし、1892(…

幸田真音「天佑なり」を読むⅡ-21~30

幸田真音「天佑なり」を読むⅡ-21 藤村らは田島の報告を得て驚き、藤村が前田の所にやって来て、「我々は最初、この仕事が成功するまでは一切他人に秘しておくつもりだったが、すでに日本側出資額を50万円と契約した以上、我々だけの力だけでは及ばなく…

幸田真音「天佑なり」を読むⅡ-11~20

幸田真音「天佑なり」を読むⅡ-11 それで公使館で相談の結果、原書記官が同行してくれることになりましたが、原は「君の専門的な用件には通弁できない。それで君の便宜のために英語の解る人に出て貰うよう交渉してみよう」と云い、特許局では英語の解る人…

幸田真音「天佑なり」を読むⅡ-1~10

幸田真音「天佑なり」を読むⅡ-1 1881(明治14)年の春になって、友人からいつまでも学校で教員をするだけでなく、文部省へ入って教育の事務をとってはどうかと勧められ、高橋も同感で、その話をすすめてもらいました。 ところが当時文部省の小丞か何…

幸田真音「天佑なり」を読むⅠ-21~30

幸田真音「天佑なり」を読むⅠ-21 このようんな経緯(いきさつ)で、やがて同藩の家老友常典膳と会見して正式に決定、そこで高橋はいくらかの月給を前借りして、その一部で洋服を誂え、他の一部で借財の始末をしました。もっとも本多らのために借りた25…

幸田真音「天佑なり」を読むⅠ-11~20

幸田真音「天佑なり」を読むⅠ-11 やがてブラウン老人夫妻は「自分たちは清国へ行くことになった。自分の親戚で桑港の税関に勤務している親切な人がいる。お前はそこへ行ったらよかろう。そうしたら昼間は主人について税関の仕事の手伝いをしながら事務を…

幸田真音「天佑なり」を読むⅠ-1~10

幸田真音「天佑なり」を読むⅠ-1 幸田真音(こうだまいん)「天佑なり 高橋是清・百年前の日本国債」は2011(平成23)年11月7日から東京新聞その他に連載を開始、2013(平成25)年角川書店から刊行され、第33回新田次郎賞を受賞した作品で…